小規模事業者持続化補助金は、中小企業庁が管轄する、小規模事業者や個人事業主の販路開拓や生産性向上を支援するための重要な補助金制度です。自社の経営計画を策定し、その計画に基づいて行うマーケティング施策や業務効率化の取組みに対し、その経費の一部を国が補助してくれます。
本記事では、この補助金の基本情報や申請条件、補助額、対象経費、申請の流れやコツなどについて、最新の情報に基づき分かりやすく解説します。
1. 小規模事業者持続化補助金の目的と特徴


小規模事業者持続化補助金は、販路拡大や事業効率化の取り組みを後押しすることで、地域の小規模事業者の経営を持続的に成長させることを狙いとしています。他の補助制度と比べた際の本補助金の主な特徴は以下の通りです。
- 販路開拓・生産性向上への支援
チラシやWebサイトによるPR、新商品開発、新設備導入など、小規模事業者が売上アップや業務効率化を図る様々な取組みに対し、資金面の支援を受けることができます。事業者自身が策定した経営計画に基づいて実施する取り組みであれば、幅広い内容が支援対象となります。 - 経営計画策定プロセスの重視
単にお金を給付する制度ではなく、経営計画の策定から関与する点が特徴です。申請にあたっては事業計画書の作成が必須であり、地域の商工会・商工会議所の中小企業診断士のサポートを受けながら計画を練ることで、補助事業後も役立つ実践的な経営戦略を構築できます。 - 商工会・商工会議所の支援
本補助金を申請するには、必ず地元の商工会議所または商工会による事前確認や支援を受ける必要があります。会員でなくても利用可能であり、自社の所在地を管轄する商工団体へ相談することで申請準備をスムーズに進められます。専門知識が必要な場合、中小企業診断士など補助金申請の支援専門家に相談する方法もあります。 - 幅広い経費が補助対象
「販路開拓」に直接関係する費用だけでなく、生産性向上に資する設備投資やIT導入、広告宣伝費、研修費用など多様な経費項目が補助対象に含まれます。詳細は後述しますが、他の補助金では対象外になりがちな経費もカバーしており、小規模事業者の実情に合わせて柔軟に活用できます。 - 特別枠による上乗せ支援
一般的な補助枠に加えて、条件を満たす事業者には補助上限額の上乗せや特例措置があります。例えば、新たにインボイス発行事業者となった場合の「インボイス特例」や、従業員の賃金引上げに取り組む場合の「賃金引上げ特例」などです。これら特例を活用すれば、後述するように通常より手厚い補助を受けることも可能です。
以上のように、小規模事業者持続化補助金は単なる資金援助に留まらず、計画づくりから販路拡大まで一貫して小規模事業者を支援する仕組みとなっています。
補助金を申請できる対象者と条件


この補助金を利用できるのは、日本国内で事業を営む小規模事業者または個人事業主です。ただし、すべての小規模事業者が無条件で対象となるわけではなく、いくつかの要件を満たす必要があります。主な申請資格条件を確認しましょう。
- 小規模事業者の定義(従業員規模)
業種ごとに常時使用する従業員数の上限が定められています。例えば、商業・サービス業(※宿泊業・娯楽業を除く)の場合は従業員5人以下、製造業その他の業種では20人以下であることが条件です。なお、宿泊業・娯楽業に関しても20人以下で小規模事業者に該当します。 - 資本・所得に関する要件
申請企業が大企業の子会社等ではないことも条件です。具体的には、資本金または出資金が5億円以上の企業に100%株式を保有されていないこと、および直近3年間の各年度の課税所得平均が15億円を超えていないことが求められます。これにより、実質的に中小企業基本法でいう中小企業の範囲に該当する事業者のみが対象となります。 - 事業の実施場所
申請事業者は、商工会議所または商工会の管轄地域内で事業を営んでいることが必要です。例えば所在地が商工会地域(町村部)であれば商工会、商工会議所地域(市部)であれば商工会議所が窓口となります。会員・非会員を問わず応募可能なので、自社がどちらの管轄か分からない場合は最寄りの商工会または商工会議所に問い合わせましょう。 - 創業前の事業者は対象外
補助金申請時点でまだ開業していない創業予定者(開業届を提出済みでも、開業日が申請日より後の場合)は対象になりません。実際に事業を開始し収益活動を行っていることが求められます。 - 対象外となる事業者種別
一部の法人形態や事業者は補助対象から除かれています。例えば、医療法人・宗教法人・学校法人・農事組合法人など公益性の強い法人や、農林水産業で農協等への出荷収入が主な個人農業者は対象外です。また、NPO法人については一定の要件を満たす場合に限り申請可能ですが、協同組合(企業組合・協業組合を除く)や一般社団・財団法人、任意団体などは基本的に対象外となります。自社がこれらに該当しないか事前に確認しておきましょう。
以上の条件を満たす小規模事業者であれば、小規模事業者持続化補助金に応募することが可能です。なお、過去に同補助金(一般型やコロナ特別対応型等)で採択され事業を実施した場合は、所定の実績報告書類を提出済みであることや、一定期間(一般型の場合、前回採択から1年以上)の経過といった追加条件があります。これら細かな要件については公募要領で変更になる可能性もあるため、最新の公募要領を必ず確認しましょう。
補助金の補助額・補助率と特例措置


小規模事業者持続化補助金で受け取れる補助金額は、提出する事業計画の内容や適用される枠によって異なります。ここでは、基本的な補助上限額と補助率、そして知っておきたい特例措置について解説します。
- 補助上限額
一般的な通常枠での補助上限額は50万円です。しかし、計画内容や事業者の状況に応じて、最大で250万円まで上限額が拡大されるケースがあります。これは後述の特例を組み合わせた場合で、実際の上限額は以下の特例要件を満たすかによって変動します。 - 補助率
補助対象経費に対する補助金の割合(補助率)は、基本的に2/3となっています。例えば、対象経費が60万円の場合、その2/3である40万円が補助金として支給されます。ただし、赤字事業者が賃金引上げ特例を利用する場合には補助率が3/4に引き上げられる特例があります。 - インボイス特例
2023年度に新設された特例措置で、免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)に登録した場合に適用されます。インボイス制度対応の負担を支援する目的で、補助上限額に一律50万円が上乗せされます。つまり通常枠50万円にインボイス特例を加えると上限100万円となり、他の枠でも条件を満たせば上限額が+50万円増額されます。 - 賃金引上げ特例
従業員の処遇改善を促すための特例で、事業内最低賃金を50円以上引き上げた小規模事業者が対象です。この特例を適用すると、補助上限額が+150万円されます。例えば通常枠50万円に賃上げ特例を適用すると上限200万円となり、さらに前述のインボイス特例も満たす場合はトータルで最大250万円まで上限が拡大します。なお、賃上げ特例を利用した赤字事業者については、前述の通り補助率も3/4に引き上がります。 - 創業型・その他の枠
小規模事業者持続化補助金には通常枠以外にも、創業後間もない事業者向けの「創業型」や、複数事業者が連携して申請する「共同・協業型」、商工会・商工会議所の内部組織が地域事業者を支援する「ビジネスコミュニティ型」など、2025年度現在いくつかの枠組みが用意されています。例えば創業型の補助上限額は200万円(特例適用で最大250万円)となっており、創業後3年以内の事業者が対象です。
以上のように、自社の状況や事業計画に応じて適切な申請枠を選択することが重要です。通常は補助率2/3・上限50万円ですが、インボイス対応や賃上げ等の取組みを組み合わせることで上限額を引き上げられる可能性があります。計画段階でこれら特例要件を満たせるか検討し、該当する場合は積極的に活用しましょう。
補助対象となる経費の範囲


小規模事業者持続化補助金で補助対象となる経費は、「販路開拓や生産性向上のために実施する事業」に直接関連する費用です。公募要領では細かく定義されていますが、主な経費区分とその内容・例示は次のとおりです。
- 機械装置等費
補助事業の遂行に必要な機械装置や器具、設備の購入・導入費用。例えば、新製品製造のための機械設備、サービス提供に必要な器具の購入費などが該当します。 - 広報費
販路拡大のための宣伝・広告に係る費用。チラシ・パンフレット・ポスターのデザイン印刷費、看板の制作設置費、オンライン広告出稿費など、顧客周知に必要な広報活動の経費が含まれます。 - ウェブサイト関連費
ホームページやECサイトの新規作成・改良・運用にかかる費用。外部業者へのサイト制作委託費、ネットショップ構築費用、サイト更新のシステム導入費などが対象です。 - 展示会等出展費
展示会や商談会への出展にかかる経費。具体的には、展示会のブース出展料、展示用パネルやサンプル製作費、オンライン展示会の参加費用などが該当します。 - 旅費
補助事業に関連して発生する出張旅費。販路開拓のための商談訪問や展示会参加のための交通費・宿泊費など、事業に必要な移動にかかる費用です。 - 新商品開発費
新たな商品やサービスの開発に関連する経費。試作品の材料費、外部機関への成分分析・テスト依頼費、新サービス設計のためのリサーチ費用などが含まれます。 - 資料購入費
事業推進に必要な書籍や専門資料の購入費用。業界動向のレポート購入や技術習得のための教材購入費など、事業に役立つ資料の購入が対象です。 - 借料
リース料やレンタル料など、所有権の移転を伴わない設備や物品の借用費。例えば、プロジェクト期間中だけ使用する機器のレンタル料や仮設店舗・オフィスの賃借料などが該当します。 - 設備処分費
事業実施のために不要となった設備や備品を廃棄・処分する費用。店舗改装に伴う古い什器の処分費や、生産ライン刷新のための旧設備解体費用などがこれに当たります。 - 委託・外注費
補助事業を進める上で必要な業務を外部に委託する費用。例えば、専門コンサルタントへの調査依頼費、デザインやシステム開発の外注費、税理士等専門家への相談料などが含まれます。
※注意
補助対象経費には各項目ごとに細かな制約もあります。特に留意すべきなのはウェブサイト関連費と設備処分費です。ウェブサイト関連費は補助金額の1/4(最大50万円)が上限であり、ウェブサイト費用のみで申請することはできません。また、設備処分費についても補助対象経費総額の1/2が上限と定められており、こちらも単独項目のみでの申請は認められません。したがって、例えばウェブサイト制作費用を計上する場合は、必ず他の経費項目(機械装置費や広報費など)と組み合わせ、かつウェブ費用が補助金全体の25%以内に収まるように計画を立てる必要があります。
なお、補助対象となるのは補助事業の採択・交付決定後に発生した経費に限られます。申請以前に実施・支出済みの取組や費用については遡って補助を受けることはできませんので、計画実行のタイミングにも注意しましょう。また、「これは補助対象になるのか?」と疑問に思う経費がある場合、各地域の商工会・商工会議所や事務局に相談すると安心です。公募要領には対象経費の具体例も掲載されていますので、事前によく確認しておきましょう。
申請方法とスケジュールの概要


小規模事業者持続化補助金に申請するためには、いくつかのステップを順を追って進める必要があります。ここでは一般的な申請から受給までの流れを解説します。
- 経営計画書・補助事業計画書の作成
まず、自社の現状や課題を分析し、補助金を活用して行う具体的な取組内容を盛り込んだ経営計画書および補助事業計画書を作成します。計画には、事業の目的や目標、具体的な施策、期待される効果(売上○%増加や業務時間△%削減など)を明確に記載しましょう。ここが採択可否を左右する重要ポイントです。 - 商工会議所・商工会への相談・確認
計画書の下書きができたら、早めに地元の商工会議所または商工会に連絡し、事前相談や書類確認を依頼します。商工担当者は計画内容についてアドバイスをくれたり、申請に必要な「支援機関確認書」(商工会議所等が発行する確認書類)の発行手続きを行ったりしてくれます。申請にはこの確認書類が必要になるため、必ず期限に余裕をもって相談しましょう。 - 必要書類の準備
公募要領で指定された申請書類一式を揃えます。具体的には、作成した経営計画書・事業計画書のほか、借入金残高証明書(必要な場合)、直近の決算書または確定申告書の写し、見積書(2025年から見積書等の提出が必須化)などが求められます。特に事業計画書については採択率を高めるには中小企業診断士への相談が必要です。書類不備は減点や不採択に繋がるため、提出前に漏れがないか念入りにチェックしてください。 - 電子申請による書類提出
作成・収集した書類を、指定の電子申請システムから期限内に提出します。2024年度途中より、従来のJグランツに代わり持続化補助金専用の電子申請システムへ移行しました。このシステムを利用するにはGビズIDプライムまたはメンバーアカウントが必要です(※仮名の暫定IDは不可)。まだ取得していない場合は、アカウント取得に数週間かかることもあるため早めに手続きを始めましょう。電子申請以外(紙申請など)は原則受け付けていないので注意が必要です。 - 採択結果の通知
提出締切後、審査が行われます。採択結果は後日、公募回ごとに発表され、採択者には郵送等で通知が届きます(商工会議所・商工会Webサイトで採択者一覧が公表されることもあります)。採択された場合、事務局から交付申請手続きの案内があります。 - 交付決定・事業開始
交付申請手続きを経て「交付決定通知」が発行されれば、いよいよ補助事業の開始です。交付決定日以降に発生した経費が補助対象となるため、それ以前に発注・契約・購入してしまわないよう注意しましょう。計画書に沿って事業を実施し、補助対象経費の支出について領収書や証拠書類をしっかり保存しておきます。 - 事業完了・実績報告
補助事業実施期間内に計画した取組みを完了したら、実績報告書を作成して事務局へ提出します。実績報告書には、実施内容や成果、支出した経費の内訳(領収書や請求書の写しを添付)などを記載します。事務局による内容確認・確定を経て、最終的な補助金額が決定します。 - 補助金の受領
実績報告の内容が承認されると、指定した銀行口座へ補助金が振り込まれます。ここまでが一連の流れです。なお、補助金は**後払い(精算払い)**である点に注意してください。事業者が一旦全額を立替えて事業を行い、後から補助割合に応じた金額が支給される形となります。
スケジュールについて
持続化補助金<一般型>は年に数回公募(申請受付期間)が設定されます。概ね年に3~4回のペースで募集があります。各回によってスケジュールや実施期間が異なるため、最新の募集要項を中小企業庁や商工会議所等の公式発表で確認し、締切に余裕をもって準備を進めましょう。締切間際は電子申請システムが混み合う可能性もあるため、できれば締切日の1週間以上前には提出を完了させることをおすすめします。
まとめ:小規模事業者持続化補助金を活用して事業成長へ
小規模事業者持続化補助金は、販路拡大や生産性向上に取り組む小規模事業者にとって心強い支援制度です。申請にあたっては、地域の商工会議所・商工会と連携しながら明確な経営計画を策定し、採択に有利となるポイントを踏まえた申請書類を作成することが鍵となります。補助金の採択を受けられれば、最大で数百万円規模の資金援助を得て、広告宣伝や設備導入、新商品開発などの施策を加速させることができます。
ただし、補助金はあくまで事業発展の手段であり、それ自体が目的ではありません。補助金を上手に活用して販路開拓等の成果を上げ、その後の自社の持続的な成長につなげることが重要です。計画段階から事業目標を明確にし、補助事業終了後も見据えて経営力強化に取り組みましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 小規模事業者持続化補助金とはどのような制度ですか?
A. 小規模事業者持続化補助金は、中小企業庁が管轄する小規模事業者向けの補助金制度です。小規模事業者や個人事業主が、自社の経営計画に基づいて実施する販路開拓や生産性向上の取組みに対し、その経費の一部を国が補助する制度です。
Q2. 小規模事業者持続化補助金を申請するにはどのような条件が必要ですか?
A. 申請できるのは、日本国内で事業を営む小規模事業者または個人事業主です。ただし従業員規模や資本金等に関する条件を満たす必要があります。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)なら5人以下、製造業その他なら20人以下の従業員規模であることが基本条件です。事業所の所在地については、商工会議所または商工会の管轄内で事業を営んでいれば会員でなくても申請可能です。
Q3. 小規模事業者持続化補助金ではどのような経費が対象になりますか?
A. 補助対象となる経費は、「販路開拓」や「業務効率化(生産性向上)」の取り組みに直接必要なものに限られます。具体的には、機械装置等費(設備購入費)、広報費(チラシや広告費)、ウェブサイト関連費(ホームページ作成費等)、展示会出展費、旅費(出張費)、新商品開発費、資料購入費、借料(リース料等)、設備処分費、委託・外注費など多岐にわたります。ただし、それぞれ制約もあり、ウェブサイト費用は補助金額の1/4まで(最大50万円)といった上限があります。また、補助金の対象となるのは交付決定後に発生した経費のみで、申請前に支出した費用は含められません。


